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2017年6月14日

最後の5周--佐藤琢磨会見全録その2

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インディ500に優勝した佐藤琢磨は、オーバルレーシングで最も重要なレース終盤に対して、実に緻密な計算とシミュレーションを行なっていた。

特に、エリオ・カストロネベスと繰り広げたトップバトルは、熾烈を究めるハイテンションの戦いだったが、最後の5周、佐藤琢磨は周到な読みで、戦いを描き、そしてそれを実行していた。

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◆「残り5周あれば、抜き返せる勝算がありました」

「2012年のレースから、トップで逃げきることが非常に難しくなっています。それは新しいクルマの空力性能とエアロパッケージの影響が非常に大きいんですが、先頭を走るクルマの空気の壁が凄く大きくて、その後ろに入ったドライバーはスリップストリームを使って追い抜くことができます。ですから、最終ラップまで、あるいは1周前まで、先頭を走りたくないという傾向がここ数年あったんですが、ボク自身、2012年もまったく同じ経験をしましたが、それはラストチャンスに賭けなければいけない、という難しさと、ラスト数周でイエローが入ってしまったらやっぱり勝てない。でも、(残り)5周で2番手だったので、チームのみんなもファンのみんなも心配したと思うんですが、ボクには勝算がありました」

「残り5周あれば、どんな状況であっても、自分で巻き返すことができる、自分で抜いて残り5周になったときに、もし、エリオ・カストロネベスが(琢磨は、英語では"ヘリオ"と聞こえる発音をするがここではエリオだった)1周後にボクを抜いたら、その後1周我慢してラスト2周で勝負をかけると思っていました。もし彼が2周かけて追いついて2周目に勝負したら、ボクは1周だけ様子を見て、やっぱりラスト2周で勝負をかけようと思っていました。もし3周目に仕掛けてきたら、1コーナーを抑えれば、2周半かけて追いかけてきたということは、そのあと残り2周で1コーナーを抑えれば、次の2周は追い越しできないことになりますから、そんな感じで一生懸命考えたんです。頭の中は、HPDのホンダ・エンジンは、11900回転、12000回転ですけど、同じくらいフル回転して、何度も何度もシミュレーションを考えました」

「エリオが実際2周半かけてボクに追いつい
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てくるんですけど、彼が抜かないのか抜けないのか、そこだけは唯一わからなかったね。ところが、残り2周になったとき彼が挑戦してきた、それを見て、行かないんじゃなくてけないということがわかりました」

「そこで、数周前にボクは、同じホンダ勢の(チップ)ガナッシのクルマとやり合っているんですが、その時に、どのラインを使えばディフェンドできて、護って、そのあと、1コーナーに入っていく時に、どのラインだと一番後ろのクルマに対してボクが優位に立てるか、というのをシミュレートしていました。その通りにエリオが走ってくれたので、今度こそ、白線を踏まずにですね(笑)、1コーナーは多々強い方向を向いて出ると、それが残り2周です」

「そこからは、予選のような走りで、ウェイトジャッカー、アンチロールバーを使って、"絶対にリヤは滑らせない"、だけど、フロントもアンダーステアを出して抵抗になりすぎてスピードが落ちてもいけないので、その辺を、風向きを考えながら、一生懸命走って、最後、(残り1周を示す)ホワイトフラッグが出たら、ミラーは1回も見ませんでした」

◆「牛乳は、最高の味でした」

「スポッターの(ロジャー安川の)声で、エリオが、"3バック、2バック"つまり、3台後ろ、2台後ろと近づいているのはわかっていましたが、充分にイメージできる距離だったので、ミラーを見ずに、そしてスリップストリームに入られないようにストレート毎にスリップを避ける、蛇行してはいけないんですが、インディカーのルールで、プロアクティブ、つまり、後ろのクルマに対して、動くとブロッキングと見られてしまうんですね、リアクティブということで。プロアクティブといって、後ろのクルマが動く前に、自分から進路を動くことは1回は許されています。それをうまくストレート毎に違う動きをして、エリオがボクのパターンを読まないようにして、なんとか逃げきることができました」

「もちろん、逃げ切ることができたのは、ホンダのパッケージがあったからですが、最終ラップの最終コーナーを越えられたときは、もう、このレースは自分たちが勝つんだと実感した瞬間で、実は、レース後に、GAORAの中継のみなさんも絶叫していましたが、実はボク自身も絶叫していて、本当は、直ぐに無線で"ありがとう"とみんなに言いたかったんですが、言葉にならなかったんですね。ラジオのスイッチがオンになったまま、気付かずにヘルメットの中で叫び続けていました。だけど、純粋にあれが自分の気持ちを表しています。本当に嬉しいですし、挑戦し続けて夢がかなった瞬間でした」

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「牛乳は、最高の味でした」

「そのあと、クルー全員の名前を呼んで、感謝の気持ちを伝えましたが、もう、ウィナーズサークルに帰ってくる間に、みんなが応援してくれて、特に、昨年まで所属していAJフォイトの14号車のクルーが全員ピットウォールを越えて、ボクの前まできてくれて、その全員とハイタッチをして、ウィナーズサークルに行って、そしてその時のみなさんの笑顔と、26号車のメカニック、アンドレッティ・オートスポーツの全員の、もう笑顔は忘れられません。牛乳は、最高の味でした」

(その3『明るいニュースを日本に』につづく)

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