F1に燃え、ゴルフに泣く日々。/山口正己

本日の山口正己

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2016年10月12日

観客が減ったと言いたがる方々へ

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ホンダだけに頼らずに。


◆訳知り顔の浅薄なニュースが話題になっている。

◆「F1の人気凋落は深刻、天国のセナも泣いている?」というヤフーのニュースがそれだが、このニュース、いったい何の意図があるのだろうか。

◆「セナも悲しんでいる」とサンパウロのモルンビー墓地の写真までごていねいに紹介しているこの記事の真意は、何度読み返してもわからない。

◆日本GPの金曜日、ホンダF1レーシングの長谷川祐介F1プロジェクト総責任者の会見で、朝日新聞の記者が、「F1人気が下がっていることをどう思うか」という質問をしたが、そこでも同じく意味がわからなかった。

◆わからないのは、書いた方と質問した方がふたつの勘違いをしているからだ。まず、マスコミの立場にいるならば、人気の凋落の責任の一端が自分たちにあることを認識すべきということ。他人事のように"凋落ですな"と訳知り顔で情報を流すことは、恥ずかしいだけで何の意味もない。

◆もうひとつは、人気さえあればいい、という思考回路の浅はかさ。要は、人気と人望は別物というとらえ方ができていない。

◆人気があるタレントに、人望があると勘違いしてもらっちゃ困るだろう。人気があれば選挙で票は集まるけれど、それは政策を期待されているからではなくて、単に有名だからだ。

◆もちろん、人気が出てお客さんがたくさんサーキットに集まることはいいことだ。けれど、集まればいいのかといえばそうも限らない。これは、日本車に置き換えてみれば直ぐにわかるだろう。

◆たとえばトヨタは世界一の自動車メーカーになった。しかし、それは単に台数が世界一売れているだけで、尊敬されるクルマを作った数で比較されているわけではない。

◆今年のルマン24時間レースで、『ゴールまで3分の悲劇』が起きたとき、大きくため息をついた人々は、時間の経過と共に、"やっぱりポルシェは凄い"となんとなく思ったはずだ。生産台数では足元にも及ばない、社員数も比較にならないトヨタとポルシェ。しかし、どうして"流石"と思ったのだろうか。

◆いつからか、日本のメーカーにとって"いいクルマ"とは"売れるクルマ"でしかなくなった。コンビニもファミレスも、安くて便利でありがたいけれど、それは文明的な勝利であって、文化水準が高まったわけではない。

◆セナ人気が絶大だった頃、尻馬に乗せていただいて、『GPX』というF1速報誌がバカ売れし、編集長として週刊誌やテレビに取材をしていただく恩恵に預かったが、その都度、ことあるごとに担当の方々に、10年経ったら思い出してください、と前置きして、"だっこちゃん・フラフープ・エフワン"という言葉をお伝えした。エフワンに限らず、流行りものは廃れる日が来る。

◆しかし、たとえば海外でのF1人気はどうなのだろう。訳知り顔たちは、中東などで、F1が長続きしていない、とおっしゃる。しかし、それを日本や他とのF1人気と一緒にカウントするのはお門違いだ。たとえば、イギリスGPの人気は、今年も最高潮だった。スタンドは超満員。もちろん、ルイス・ハミルトンがタイトルをかけて戦っていることもあるだろう。ジェンソン・バトンが最後になるかもしれない、という哀愁を求めるファンもいるだろう。

◆そういうキャラのたった母国ドライバーがいることは大きいけれど、18歳のF1最年少ウィナーのマックス・フェルスタッペンのファンも少なくなかった。ちゃんと観ているということだ。

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国際レースであることもお忘れなく。極東の島国を脱却するために、グローバル思考がキモになる。

◆要するに、流行モノで終わらせないために必要なひとつは、文化的な成長が期待できる情報を流すこと。それをやらずに客が減った、セナが嘆いている、というのは無意味な浅知恵ということだ。

◆翻って、日本とイギリスの自動車産業を比べると、イギリスの自動車メーカーは、ジャガーもベントレーも、ことごとく敗者となった。ビジネス的に圧倒的に日本の勝ち。しかし、それは売れればいい商品で勝負がついただけであり、その証拠に、ここ数年、ジャガーやベントレーが少しずつ息を吹き返しつつある。

◆とはいえ、たぶん永久にジャガーがトヨタ自動車の生産台数を追い越すことはないだろう。ビジネスとしても大成功を納めているマクラーレン・カーズもしかり。しかし、日本車が勝ちだともうひとつ思いにくいのは何故かといえば、それは単に数を売っているだけだからだ。尊敬されるクルマを作っていない日本。なんだか哀しい。

◆もちろん、商売なのだから売れなければ話にならない。しかし、売れればいいってもんではない。

◆観客が減った、という事実を情報として伝えるのはまぁ、ありだが、伝えっぱなしではなく増やすために、どうするのか。日本人ならそこを考えなくちゃいかんでしょう。大衆の嗜好にそぐわないから売れない、という理屈は正しいけれど、逆転の発想も時には必要だ。

◆自動車は日本の基幹産業。それを送り出すメーカーが、密接な関係にあるモーターレーシングをないがしろにしている思考回路に問題がある。

◆いやいや、人気がないからしょうがないです、ではなく、人気を高める工夫が必要ではないか、ということだ。

◆繰り返しになるけれど、日本の基幹産業は自動車だ。資源を持たずに生産に主力を置くべきという意見に反対はないだろう。モノづくりが国を豊かにする。

◆生産というクォリティを高めるために、モーターレーシングが格好の場である、ということを知らない人はいないだろう。特にF1は最たる場だ。

◆さて、ヤフーと朝日の方々、なにが必要かお分かりいただけただろうか。

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