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F1に燃え、ゴルフに泣く日々。/山口正己

こんなこと知ってた?

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2017年1月17日

「オモチャ買ったらナンバーが着いてきた」--改めてS660が欲しくなった

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発売直後に試乗した時は普通にいいと思っただけだった。しかし、今回、改めて見直した。最初に乗ったのがオートマチックで、今回はマニュアルだったという違いが大きい。S660が欲しくなった。

オートマチックのS660に乗った段階で、何人かに「ロードスターとS660で迷っているけれど、どっちかな?」と訊かれて、「車格でいうとロードスターかな。若干高いけど、予算が許すならロードスターかも」と言っていた。しかし、今回、5日間のおつきあいで、意見が変わった。迷わず、S660、と。

理由は、軽自動車だからだ。もう少し正確に言うと、重量が軽いから。軽さはすべてにわたって運動性の気持ちよさに貢献する。そしてそれがミッドシップというレイアウトが軽さを際立たせる。

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日常使いには、低い座席への乗り降りが、年寄りには大変なことは覚悟せよ。

クルマの善し悪しは、5m走ればわかるというのが私の説だ。実は、それ以上のことが分らないだけ、というオチがあるのだが、いいクルマは、ちょっと動いただけで良さが伝わる。元F1ドライバーの鈴木亜久里さんから、「素性のいいレーシングカーは、ピットロードを出るまでにそれが分かる」と聞いたことがある。次元は違うにしろ、そういうことだ。

ただし、ひとつお断りしておくが、クルマの楽しさがスピードだけと思っているムキにはS660はお勧めしない。ゆっくり走ってもクルマと対話することが楽しいことを知っているなら、迷うことなくS660だ。

まず、ステアリングの剛性感。剛性が低いと、走り出した瞬間に、タワミというか、捩れというか、頼りなさを感じるが、S660はそれがない。きちんと、引き締まった箱の正しい位置にサスペンションが取り付けられて、ステアリング系統を含めて、仲介するブッシュ類にブヨブヨした違和感がない。それは基本的に、サスペンションのジオメトリーなどが正しい設計をされているからに違いない。ブッシュで誤魔化す必要がないからだ。

マルチリンクだのなんとかストラットだの、ありがたい呼称で呼ばれたサスペンションをよく観察すると、サスペンションの取付位置が、車室を広くするために本来の位置からズレているクルマが存在する。下手をすると、ピポットをピロポールにしたら固まって動かないサスペンションもあった。結果としてブッシュで誤魔化してなんとかしているクルマだったわけだが、S660はそうした誤魔化しがない。気持ちのよさは、本来の設計通りのサスペンションの動きをするからだ。

ステアリングを直進からかすかに動かすだけで、剛性感は理解できる。もちろん、本質的な剛性ではないかもしれず、あくまで体感するだけの話かもしれないが、この剛性"感"が乏しい日本車があまりに多い。手→ステアリング→リンク(最近は信号)→ホイール→タイヤと伝わり、そこから逆に手まで戻ってくる間に、なにか、綿やスポンジのようなものが挟まった感じがしない、という感覚が嬉しい。

だからと言って、シビアすぎて過敏なのはよろしくないけれど、少なくとも今回拝借した広報車のS660は、非常に高いレベルでのその"リニア感"を感じることができた。

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ここがS660の魅力の集大成。特に真ん中のブレーキペダルのフィーリングが素晴しい。

リニアなフィーリングは、クルマを通して地球と対話する『運転』という作業をとても楽しくしてくれる。ステアリングを切ったときの手応えは、後ろにエンジンが載っているミッドシップの重量配分のおかげもあって、実に軽い。それも、ある手応えがあっての軽さなので、フラフラせず、カチッとしながら頼りがいのある軽さだ。

クイックという使い古された言葉とも違う。ちょうどよく切っただけ曲がってくれるし、コーナリング中にさらに切り込む必要がる場合は、そうすればその通りに鼻先が動いてくれるから、ハンドルを切るのが楽しくなる。

これまで、広報車を拝借して、返したくなくなったことが何度かある。現在の形になったアウディTT、ホンダ・ビート、NSXタイプR、R32GT-R、ダイハツ・コペン、 S2000、マクラーレン12-Cがそうだった。ただし、R32GT-Rが最終日の雨が降ってウェット路面でのコントロールの楽しさがわかったことと、S2000は楽しむためにはV-TECを効かせる必要があって、V-TECが効かない街中の遵法速度ではもの足らない、という条件付きなので、正確にはこの仲間からは外れる。

このなかで、ビートとコペンが軽自動車であるところに注目してほしい。軽なのに楽しいと思ったのは、今回のS660も同じ。ビートとコペンは、NSXタイプRと同じく、返却前夜、一端ベッドに入ってからノコノコ起き出して、夜中の2時頃、もう一回、首都高に走りに行ったくらい素晴らしかった。今回のS660は同じ領域を感じた。いや、こちらが馬齢を重ねたのにそう感じたということは、さらに上のレベルと言っていいかもしれない。

ステアリングのフィーリングとともに、シフトの小気味よさもいい。これも剛性感がかっちりしていて、グニャッとした頼りなさがない。シフトアップもシフトダウンも、コクコクッと変速を楽しめる。

試しに、クラッチペダルを踏まずにシフトしてみると、回転が合った瞬間にコクッと、何のストレスもなくシフトチェンジができた。シンクロが効いて剛性がしっかりして、ブッシュなどで誤魔化していない証拠だ。

同じくしっかり感はブレーキにも言えた。踏んだだけ止まる。当たり前のようだが、これは非常に重要なことだ。もしかすると、ちょっと踏んだだけでキュッと止まらないS660のような"正しいブレーキ"は、「効きが悪い」と言われかねない。しかし、失礼を承知でわかったような言い方をしてしまうと、ちょっと踏んでキュッと止まるのがいいブレーキと思っているのは、正しい運転が理解できないない証拠だ。

残念ながら、多くのメーカーの営業サイドは、そうしたユーザーが多いことから、間違った注文を開発/製作側に押しつけ、ブレーキは随分前から、『ちょっと踏んだキュッと止まる』ようになっているのは嘆かわしいのだが、S660は、そこに妥協がない。安全のためにも、正しいブレーキ設定にして、ユーザーが、踏んだだけ止まるのがいいブレーキであるという認識になってほしいと改めて思った。

さて、"パワーはどうですか?"という質問への答は、街中をドリフトでかっ飛ばしたいのでない限り、軽自動車であることを考えれば充分、と言っておこう。もちろん、100馬力あったらもっと楽しい、という見方もある。しかし、そう思うなら、別のクルマを買いなさい。

全体のフィーリングとして、マクラーレン12 Cのミニチュア版だ。乗ったことがないから分からんぜ、とおっしゃるかもしれないが、2000万円を越えるF1テクノロジーで作られたクルマということで、想像していただければ充分だ。

簡単に言えば、ステアリングは切っただけ曲がり、ブレーキは踏んだだけ止まる。アクセルが踏んだだけ走るのか、という部分だけは少し違うが、実際に街中を走ってみると、そこそこいける。

回頭性のよさや、ステアリング、シフトレバー、ブレーキペダルのリニア感は、マクラーレン12Cに通じると言っても過言ではない。アクセルをグッと踏み込んだ時に、背中を蹴飛ばすパワーがないだけだ。それがほしければ、もう1台、マクラーレン12 CかS650650Sをオススメする。

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申し訳程度のラゲッジスペース。これも、幌を仕舞うと埋まってしまう。

荷物が積めない、という点を指摘する声もある。その通りだ。布製の屋根を外して丸めて入れると、ボンネットの下にある小さなラゲッジスペースは一杯になる。シートの後ろのスペースもほぼゼロ。なにも積めない。しかし、走って楽しいから文句を言うな、ということだ。

楽しいのは、すべて軽さによる。重量がビートの730kgより重くなっているものの830kg、それがミッドシップと相まってステアリングが軽くて軽快。軽いから、小さなタイヤ(と言っても15インチ)の中に納まるディスクでもブレーキが充分に効く。軽いから、660ccのターボでもそれなりに走る。軽いから、シフトフィーリングが小気味いい。

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ミッドシップにエンジンが乗っていることだけで嬉しいじゃないか。

先代のビートに初めて乗ったときも同じことを思った。パワーが足らないとか荷物を積めないという意見もあるだろうが、だったら別のクルマにしなさい。S660は、「おもちゃを買ったらナンバーが着いてきた」、と思えば、こんなに楽しくていい買い物はない。

そして、最後のオマケは、青山-八王子-富士スピードウェイ-八王子-相模湖-八王子-青山の95%以上を下道で300km少々をエアコンつけて楽しく走って、ガソリンが21リッターしか入らなかったことだった。

<完>

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